今年9月、時事通信社が行った世論調査によれば、「墓じまいは良いことだ」と答えた人がなんと6割に上ったそうです。
一方で「墓を元の場所から移転するべきではない」と回答した人はわずか2割強。
今や、「墓じまいしていいんじゃない?」という人は「墓じまいなんてダメだ!」という人の3倍もいることになります。
これは、お墓業界やお寺さんにとっては、うすうす感づいていたとはいえ衝撃的な数字だと思います。
なにせ「墓じまい」という言葉は、ほんの5年ほど前にはまだ世の中に登場していませんでした。
それが、ここ数年の間で、あっという間に「墓じまい」という言葉も概念もが、お茶の間に浸透したとも言えるでしょう。
事実、最近は当サイトにも墓じまいのご相談の割合が非常に高くなっています。
「今あるお墓の扱い」に困っていた人がいかに多かったかということでもありますね。
時事通信社の世論調査(2018)まとめ
時事通信社のアンケート結果をまとめてみました。
調査対象:全国18歳以上の男女2000人(回収率62%)
Q:「墓じまい」についてどう思うか?
A:
「管理や墓参りがしやすくなり良いことだ」
— 59.6%
「先祖の墓を元の場所から移転すべきでない」
— 21.9%
Q:先祖代々のお墓の継承で困っていることは?
A:「特に困っていることはない」 60.4%
「遠くにあって墓参りが大変」 20.9%
「次の継承者が見つからない」 10.4%
Q:改葬費用として適当と考える金額は?
A:「30万円未満」 49.1%
「分からない」 24.9%
「30万~50万円未満」 15.1%
注目すべきは、墓じまい肯定派が6割近くいるにもかかわらず、
・「お墓の継承で特に困っていない」人も6割以上いる
・「将来は代々の墓に入りたい」人も4割いる
・「自分の骨を散骨してほしい」人は1割弱しかいない
という点です。
このアンケートは、不特定の人からの回答ですので、「お墓について真剣に考えたことがある人」ばかりではありません。
特に若年層では少ないでしょう。(お墓にきちんと考えるのって難しいですよね。人間、切羽詰まらないとネガティブなことは考えられないものです。)
ですから、
「今特段お墓について困っていないけど、将来的に墓じまいはアリかな・・・」
「今のお墓に入るだろうけど、墓じまいは否定しませんよ・・・」
となんとなく考えている人も結構いるものと推測されます。そう考えると、6割というのも特段驚く多さではないのかもしれません。
積極的に墓じまいしないが、「墓じまいという選択肢をもっている」人は多いのですね。
ここ最近は、テレビでも頻繁に「墓じまい」が取り上げられるようになってきました。
「お墓」というのはそもそもマイナーな話題で、かつ「暗い」イメージもあってテレビにはそれほど取り上げられてこなかったのですが、今やテレビで特集するとかなり反響が大きいそうです。
また、墓じまいの増加にあわせて増えているのが散骨をご希望される方です。
日本散骨協会副理事でもある株式会社ハウスボートクラブの村田ますみさんによれば、2011年の東日本以降散骨の依頼が急増し、ここ1年でも倍近い依頼件数になっているそうです。
ですから、散骨希望の方が1割もいない、というのはちょっと意外だったのですが、こちらも特に若い人で「自分の骨を散骨する」というところにはまだ踏み切れない人が多いということでしょう。
別のアンケートで分かった面白い事実
実は、全国の石材店で構成される「一般社団法人全国優良石材店の会(全優石)」も今年4月に「お墓に対する意識およびお墓購入の実態」に関するアンケートを実施しています。
そのアンケート結果のプレスリリースの一番の要点は、
『20代を中心に若年層が「お墓」「家族」を重視していることが明らかに』
『女性20‐30 代では「墓じまい」「散骨」に罪悪感・抵抗感が強い傾向も』
という2点。
「「墓じまい」は、言葉の認知は約 70%に上るものの、意味まで理解している層は16%にとどまる。」との結果もありました。
実施したのが、墓石の販売者の団体ですから、そういう主張となるのも当然ではあります。
今までの一般的なお墓への支持の高さ、墓じまいへの抵抗感というものが前面に出されていました。
一見すると、先ほどの時事通信社のアンケートと全く違う結果だったのかな、と思うのですが、実際のアンケートの数字をみるとそうでもないことが分かります。
Q:墓じまいに対するイメージ
(複数回答可)
A:
墓じまいは先祖に申し訳ない
21.2%(20代女性29.5%)
墓じまいは後ろめたい
13.8%%(20代女性24.8%)
と、他世代と比べれば割合が高いものの、こちらでも墓じまいに否定的なイメージを持つ人はせいぜい2割程度と、奇しくも時事通信社のアンケートとほぼ同じ数字が出ているのです。
Q: 自分や家族等のお墓で検討対象となるのは?
(複数回答可)
A:一般のお墓:52.5%
永代供養墓:36.7%
納骨堂:23.4%
樹木葬:16.7%
散骨:19.4%
手元供養:8.2%
わからない:16.8%
こちらの結果も、複数回答ということを考えると、一般のお墓と樹木葬・散骨の割合比率は似たような数字になっています。
むしろ、永代供養墓など、今までの一般的な墓以外を考える人が結構多いことに驚かされます。
墓じまいはあくまで「選択肢の一つ」で
今の時代は、「多様化(ダイバーシティ)の時代」とも言われるようになりましたが、お墓の世界も例に漏れません。
もはや、当たり前に「お墓は必要」「お墓は代々受け継ぐ」時代ではありません。
これからはますますその傾向が強くなりそうです。
気になるのは、全優石のアンケートで指摘されているとおり、「墓じまい」を意味まで理解している人がまだまだ少ないということです。
「墓じまい」は一回行うと取り返しがつかない部分も多いので、墓じまいをされるときは、早急に決断してしまわず、関係方々とご相談のうえ、後悔ないよう決めることをお勧めします。
今回は、「墓じまい」に肯定的・否定的な人の割合に関する調査をお伝えしました。

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