先日知人と話していたとき、お墓の話になりました。
その知人は、ご両親がお墓を購入しようかと検討してとのことで、あちこちのお墓をネットで調べているそうです。
その中で、知人が、「お墓ってさ、跡を継ぐ人がいなくなったら「墓じまい」になってお墓の土地を返さないといけないんでしょ?……」と言ったのです。
んんーー…なんかちょっと違うような?
もう少し聞いてみると、跡継ぎがいなくなるとお墓を管理している人がお墓を片付けて合葬墓に遺骨を移してらえるんでしょ?とのこと。
そ、それは、どのお墓もそうだと思っていたら結構な間違いですから気を付けて!とややお節介ながらご説明申し上げた次第。
とはいえ、一般の方にも、ここまで「永代供養墓」的なお墓の認識が広まっていることに少々驚きました。
正しくは、
・「墓じまい」は持ち主が行うもの
・無縁墓は合葬墓に移してもらえるわけではない
ということになるでしょうか。
跡を継ぐ人がいなくなったら
跡継ぎがおらずお墓の所有者がいなくなってしまう、というのは昔から問題になっています。
跡を継ぐ人がいなくなったお墓は、「無縁墓」となってしまいます。
無縁墓となったお墓は、お寺など墓地の管理者の手で撤去され、墓石は無縁塔に移動されるか処分、遺骨は無縁塔や供養塔などの合祀墓に合葬されます。

ちなみに、永代供養墓など永代供養付のお墓の場合は、あらかじめ契約時に決められた年月が経過した後、そのお墓の管理者である霊園・お寺などが運営する合葬墓(合祀墓)に改葬されます。
なんだ、どちらも似たようなものじゃないか。
そうお思われるかもしれませんが、ここには大きな違いがあります。
お骨の移動は誰がするの?
永代供養墓の場合は、納骨庫や合同墓のような形態を取っており、墓石の撤去があるケースは少ないのですが、お墓の処分や遺骨の改葬については最初にお墓を買ったときから想定されていたものであり、費用も購入時の金額に含まれています。
一方、無縁墓は、そもそも所有者がいなくなって撤去することが想定されていなかったお墓ですので、基本的には放置されることになります。
ただ、あまり放っておくと、墓石が劣化したり、草木が伸びたりして、墓地の管理上危険な状態となることもあり、墓地の管理者が持ち出しで墓石の撤去や遺骨の改葬などをしているのです。
都営・市営など公営の墓地であれば、税金を投入することになります。
遺骨の扱いは?
永代供養墓では、合葬されても「埋葬者」として永遠に記録されることになります。墓誌などに名前を刻んで残しておけるところも多くあります。
一方無縁墓の場合、遺骨は「無縁仏」として改葬されることになります。
無縁仏とは、供養してくれる縁者がいなくなり、誰も面倒を見てくれなくなった故人のこと。誰が無縁仏として改葬されたのかは、過去帳を遡って調べたりしないと分からないことも多いでしょう。
言い方は悪いのですが、「見捨てられた人」というような扱いになってしまうのです。
「墓じまい」はお墓の土地を返すこと?
そしてもう一つ、「墓じまい」という言葉はかなり最近にできた言葉ですので、はっきりとした定義は難しいところもあるのですが、
一言でいえば、
「今あるお墓を所有者の意思で撤去して墓地を返還し、遺骨を取り出し改葬等を行うこと」
と言えるでしょう。
あくまで、お墓を持っている人が「自分から」お墓を閉じることを指すのであって、墓地の管理者やお寺さんがやってくれるものではありません。
跡を継ぐ人がいないままお墓の所有者がいなくなってしまったお墓を、「墓じまい」できる人はいないのです。
誰かが勝手に、あるいは好意でお墓を撤去してくれるわけではありません。

先ほど申し上げたとおり、無縁墓の撤去改葬は、墓地の管理者が持ち出しで行うことになります。
それらの費用は、回りまわって墓地の使用料や管理料に上乗せされて利用者に跳ね返ってくることもあるでしょう。
ですから、跡継ぎがいなくなってしまう前に「墓じまい」を行うことは、マナーだとも言えるのです。
跡継ぎがいなくなっても困らない「永代供養墓」
跡継ぎがいなくなったら「墓じまい」できない、とは言うけど、跡継ぎなんて今後ずっとでき続けるとは限らないよね?
というのは至極もっともなお墓の問題点でした。
夫婦に5~6人の子供がいるのも普通だった昔には問題になりづらかったのですが、少子化が進み独身者が増えた今では、むしろ跡継ぎがいないのも普通になってきました。
そこで登場したのが「永代供養墓」です。
通常のお墓はその持ち主自身が管理・供養を行いますが、永代供養墓では墓地の管理者であるお寺・管理会社・自治体などが管理・供養を行ってくれます。
しかも、墓地が続く限り管理・供養を行ってくれるのです。つまり、将来跡を継いだ誰かが墓じまいする必要はなく、お墓は無縁墓になることがありません。
永代供養墓の形態は、
1) 最初から合祀墓に合葬
2) 一定期間は合同墓に個別で埋葬、その後合祀墓に改葬
3) 一定期間は一般的な形のお墓に埋葬、その後合祀墓に改葬
1)2)のタイプは最近かなり増えています。「納骨堂」や「樹木葬」といった形で提供されているのもこのタイプがほとんどです。
3)は、「レンタル墓」「期限付墓所」などと呼ばれているケースもあります。現在あまり多くはありませんが、今後増えて行くのではないでしょうか。
これからのお墓選びでは、「永代供養」がついているか、というのが大きな基準となってきます。
むしろ、「永代供養」が当たり前になってくるのではないかと私は思っています。

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たった10年の間ですが、お墓を持つ人、お寺さん、民間の墓地運営者など多くの方とお話しするにつけ、世の中のお墓事情は日に日にどんどん変わっていることを実感します。
誰もが同じような場所に同じような墓を建て、同じように子孫に引き継いでいく、そんな時代はもう終わりました。
「最近は先祖を敬う気持ちが薄れているのでは?先祖をもっと大切に。」というお寺や墓地の関係者の話も耳にします。
しかし、何より大切にしなければならないのは、今生きている人の人生です。
年を取った人が安心して余生を送ることができ、遺される人も安心して見送ることができる、お墓を通じて、そんな皆様の人生のお手伝いができればと思っております。