先日、この業界では珍しくテレビでも取り上げられてニュースになったのが、秋田市の市営合葬墓に申し込み希望者が殺到した件。
先着順としたことが希望者殺到になったということで市長が陳謝する事態にまでなりました。
合葬墓、希望者また殺到 秋田市、午前5時すぎに締め切る
なぜここまで希望者が殺到したのか、また秋田市の募集方法が適切だったか、議論はいろいろありますが、詳しい話はまた別の機会に譲るとして、この事態が発生した原因は、
「使用料が安すぎる(17,000円/1体)のに生前予約できる」
という、ただただその点に尽きると思います。
公営の合葬墓は安くて5万円程度というところが多い中、なんと17,000円、しかも生前予約が可能です。
この料金設定だと「将来埋葬されるかどうか分からんがとりあえず権利だけ確保しちゃおう!」という人がいくらでも出てくるでしょう。
秋田市には、今さらと言わず他自治体の合葬墓の事例などいろいろ勉強していただき、猛省のうえ状況を改善していただきたいところです。
都市部で始まった公営の合葬墓
さて、秋田市のやり方に問題があったにせよ、このニュースによって地方でも跡継ぎがいらない「合葬墓」の需要が非常に多いことが、図らずも世に知られるようになりました。
都会では、昔から「墓が足りない」という問題が常についてまわりました。
墓地を新しく開設できるのは住宅地から遠く離れた山の中くらい、そんな中、東京都は1998年(平成10年)、都立小平霊園に早くも「合葬埋蔵施設」と呼ばれる合葬墓を開設しました。
地方自治体が運営者でありながら、跡継ぎ不要、最初からもしくは一定期間経過後に合葬納骨庫に埋蔵、年間管理費も不要、という、今の「永代供養墓」のテンプレートとも言える施設です。
「自治体」というつぶれたりなくなったりしない「母体」が運営するという安心感と、宗教色のなさも相まって人気は高く、その後都立霊園では多磨霊園、八柱霊園などにも同じ施設が作られました。
周囲でも、特に人口が多く墓地が不足していた都市部の自治体を中心に、跡継ぎ不要の合葬式墓地を建設する例が相次ぎました。
ちなみに、自治体で運営する墓地・霊園では、政教分離の原則もあり、埋葬された人個々に対する「宗教的な供養」というのは一切行ってはくれません。
通常は、日々の管理・お花のお供えに加え、定期的に献花式などイベントを行う、というのが一般的です。
従って、呼び名も「永代供養墓」とは呼ばず、「合葬墓」「合葬式墓地」「合葬埋蔵施設」などという名前が付いています。
実は地方でこそ必要だった永代供養墓
さて、地方はというと、土地に余裕があるうえ人口も減少傾向となり、また墓地の永代使用料も都市部のように高くないことから、墓が不足することは問題化してきませんでした。
また、お寺との檀家関係もまだまだ強い傾向にあり、「個別にお墓を立てるのが当たり前」であり、他人と一緒に埋葬されるなんてありえない……、という合葬への抵抗感が根強く残っていたこともあって、「合葬墓」や「永代供養墓」の必要性は表面化しませんでした。
一方で、高齢化が進み、子供達は都会に出て行ってしまって戻ってこないために「跡継ぎ不足」という問題に直面し始めたのはむしろ地方だったのです。
実際、平成元年に日本初の「永代供養墓」が開設されたのも地方の新潟市でした。
「なんだ新潟市なんて都会じゃない!?」と思うかもしれませんが、開設当時は「西蒲原郡巻町」、しかも永代供養墓のある妙光寺は町の中心から車で20分ほどの農村の端。失礼を承知で申し上げると、「ド」が付く田舎です。
それから30年、地方でもお墓の問題は先送りにできなくなってきました。
「今あるお墓どうするの?もう世話してくれる人いなくなるよ……」
「永代供養墓ってのがあるそうじゃないか……」
「自分のお墓なんて必要ないし、合葬でもいいよねえ……」
墓掃除からも、管理費の支払いからも、跡継ぎの悩みからも解放される「合葬墓」「永代供養墓」が、受け入れられる土壌はあっという間にできていきました。
地方でも増える公営の合葬墓
それに伴い、地方でも合葬墓が建設されると共に、建設の検討に入る、という自治体も次々と現れています。
自治体で「合葬墓」を新たに建設する場合、当たり前ですが税金で建てることになります。
そうなると、建設するには「事前の調査」→「施設概要の策定」→「予算の確保」→「施設設計」→「建設」→「利用者募集」と多くのプロセスが必要となり、実際には計画してから利用者募集までは4~5年程度かかってしまいます。
ですので、今すでに利用が開始されている合葬墓がある自治体は、お墓問題への取り組みが比較的早かった自治体、とも言えるでしょう。
少し前になりますが、2016年1月、石川県の内灘町では県下初の公営合葬墓が完成し、話題になりました。
内灘町は金沢市に程近い住宅地も多く、過疎の進む地方自治体、というのとは少々異なるものの、地方都市のさらに衛星都市で公営合葬墓が作られ、観覧希望者も多く来たことは、地方でもお墓の形が変わりつつあるということで注目されました。
石川県内では内灘町と同じ金沢市に近い津幡町でも2018年8月に合葬墓が完成しました。
「公営合葬墓」の建設ブームは、これからもっと大きく広がっていきそうです。
地方自治体による公営合葬墓の例
最後に、最近の「公営合葬墓」の主な事例をピックアップしてみました。
これからは、「公営合葬墓」の有り無しや良し悪しが、住みたい町の指標の一つになるかもしれません。
自治体名 | 完成時期 | 1体の使用料 |
---|---|---|
長野県小諸市 | 2008年 | 5万円~ |
石川県内灘町 | 2016/1 | 9万円~ |
茨城県大洗町 | 2017/5 | 8.4万円(生前不可) |
兵庫県宝塚市 | 2018/2 | 5万円~ |
秋田県秋田市 | 2018/3 | 1.7万円 |
青森県弘前市 | 2018/8 | 6万円(生前不可) |
石川県津幡町 | 2018/8 | 15万円~ |
茨城県水戸市 | 2020年(予) | 未定 |
埼玉県さいたま市 | 2020年(予) | 未定 |

公営の合葬墓(永代供養墓)データベース【北海道編】

公営の合葬墓(永代供養墓)データベース【東北・北関東編】

公営の合葬墓(永代供養墓)データベース【首都圏・南関東編】