終活はまだ早い?
一般的に終活には、葬式・墓のこと、持ち物の整理、遺産・相続のことなど、「死んだ時」に必要となる事柄が多いので、どうしても「高齢者」の問題と思われがちですが、高齢者の親を持つ方はもちろん、40~50代の方も今のうちに「終活」を知ることにより、より良い人生を送ることができるのではないかと思っています。終活に詳しい立教大学社会デザイン研究所研究員の星野哲さんは、「最近はやっている『終活』は、自分の周りの人たちとの関与を極力減らし、自分と周りの関係をどんどん切っていってるように思える。果たしてそれで幸せになれるのか。「終活」は人とのつながりを大切にする『集活』であるべきだ。」ということを常々おっしゃっています。
まずは自分の幸せのために「終活」を考えてみましょう。
次に、残される人の幸せが自分の幸せになるのなら、
「自分の考える残される人の幸せ = 残される人が感じる幸せ」
となっているかどうかを考えてみてください。
例えば、子供に葬式で手間をかけさせたくないため家族のみの葬儀をするよう言い残したものの、いざ子供が葬儀を済ませると葬儀に参加できなかった故人の知り合いがクレームしてきたり家に訪ねてきたりで、かえって普通に葬儀をすればよかった、なんてこともあるわけです。
自分の人生が豊かになり、幸せになれる終活を、始めてみませんか!?
終活とは何か?
自分が死んだときのための準備というと、縁起でもない……と言われるのがオチでしたが、人間はいつか必ず死ぬもの、そして今は医療の発達もあってなかなかピンピンコロリ(健康で矍鑠(かくしゃく)な人がポックリ死ぬこと)というわけにもいきません。健康で元気なうちに、終活の準備を、というのが世の中に浸透し始めています。
では、『終活』は何をすればよいのでしょうか。
まずは大雑把に項目をまとめてみましょう。
1.葬式のこと
2.墓のこと
3.身の回りの持ち物の整理(ペット)
4.契約についての整理
5.財産に関する整理
6.相続に関すること
7.終末医療のこと
意外と多いでしょうか、少ないでしょうか。
全てを一気に、また完璧にやる必要はありません。
できるところから、できる範囲で進めることが、終活をうまくやるコツです。
1.葬式のこと
ご自分のお葬式はどのような形式にするか・家族やごく親しい人のみでやる or 広く友人等にも来てもらう
・一般的な葬式にする or お金を掛けず質素にする
・仏式にする or 希望のやり方がある
・戒名が必要か
先ほども述べたとおり、家族に迷惑を掛けないため家族だけで質素に葬式をしてもらったら却って手間になってしまうこともあります。
特に同じ地域で長年生活をしていた方の場合は、ご近所の方などがたくさん葬儀に駆けつけることが多いです。
ご自分の友人関係を洗い出したうえで、葬儀を営む側の家族に相談することがベストでしょう。
2.墓のこと
ご自身のお墓はどうするか・先祖からの家の墓がある場合、そこに入るか
・入らない場合、また墓がない場合、どうするか
・墓を買う or 永代供養墓にはいる or 散骨する etc.
先祖からのお墓がある場合、そこに入ることが大前提になっていると思います。
しかし、もうそれは当たり前ではない時代になりつつあります。
・奥さんはそこに入るつもりがあるか
・お子さんはそこに入るつもりがあるか
・自分が入った後にお墓の世話が続けられるか
という点をしっかりつぶしておく必要があるでしょう。
お墓がない場合は、ご自分のお墓を準備しておきましょう。
お墓は相続税がかかりませんので、どうせ買うのであれば亡くなる前に買うべきです。
残った人に任せる場合、相続人の間で、費用負担や誰が墓の面倒を見るか等、もめる場合があります。
ご自分で満足のゆくお墓を生前に準備しておくのがベストです。
3.身の回りの持ち物の整理(ペット)
持ち物は、残念ながらあの世に持って行くことはできません。基本的に残ったものは捨てられると考えましょう。
もし、残して欲しいものがあれば、誰かに伝えるなどしておきましょう。
趣味のコレクション、骨とう品、本など、他の人が見て価値を判断しにくいものは、その内容や価値を伝えておくことも重要です。
また、ペットを買っている場合で、ペットの行き先がなくなるときは、誰(どこ)に引き渡すかを決めておきましょう。
4.契約についての整理
継続的な契約をどうするか、誰に手続等してもらうか契約者が死んでも自動的に終わらない契約というのは結構あります。
例えば、
電気・ガス・水道の供給契約
新聞の定期購読契約
固定電話・インターネット・携帯電話の契約
自宅の賃貸借契約
各種保険契約
などです。
どんな契約があるか、あらかじめ整理してまとめておきましょう。
5.財産に関する整理
相続対象となる自分の財産の洗い出し財産なんて大してないから大丈夫、などと安心してはいけません!
財産は、相続人が把握できなかった場合、相続できないこともあるのです。
特に問題になるのが
・隠し口座(銀行・証券)
・生命保険
・借金(負債)
の3つです。
へそくりの銀行口座も今は必要かもしれませんが、死んだら誰かに分かるようにしましょう。
生命保険は、いくら高額な保険をかけていても、残された人が支払請求をしなければしていないのと同じです。こちらも誰かにその存在を伝えておきましょう。
借金は少し別問題ですが、後から誰も知らない借金が判明して、というのは最悪の事態です。
相続人は相続放棄することで相続財産も借金も相続しないことが可能ですが、これには期限があります。大きな借金を配偶者やお子さんに相続させなくてもすむようにしましょう。
6.相続人に関すること
財産を誰にどれだけ相続するかまず法定相続人を洗い出しましょう。
法定相続人には、相続財産を相続する権利があります。
具体的には、
[子がいる場合]
配偶者、子(亡くなっている場合はその子(つまり孫))
[子がいない場合]
配偶者、親
[子も親もいない場合]
兄弟姉妹(亡くなっている場合はその子)
「子」には養子や認知した子供も当然に含まれますので注意しましょう。
その法定相続人の誰にいくら相続させるかを決めましょう。
相続財産のうち、不動産(特に自宅)が大部分を占める場合、相続争いの大きな原因となります。
誰に何をどれだけ相続させるのか、しっかり遺言で残すのがベストです。
7.終末医療のこと
最後の項目となっていますが、非常に大切な項目の一つです。自分の終末期(死を迎える手前の時期)の医療やケアをどうするかという問題です。
重要なのは「延命治療をするか」という点、つまり、回復の見込みが薄い(もしくはない)延命措置を行うかということです。
これについては、倒れたり、または認知症などで意識・判断能力がないときに自分で決めることができませんので、あらかじめ表明しておくことで、配偶者や子供などが判断に悩まずに済みます。
なお「延命治療」の内容は様々です。
意思表示はなるべく具体的に行いましょう。
例えば、「生命維持装置なしで生きられない場合は装置をつけないで」「口から食べられなくなった場合胃ろうはしないで」といった具合です。
終活で決めたい終末医療のこと
天皇陛下の終活
2013年11月、宮内庁が天皇、皇后両陛下の御陵及び御喪儀のあり方に関する基本方針を発表しました。http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/goryou/pdf/arikata.pdf
これは、天皇、皇后両陛下のお考えを踏まえ、両陛下の葬儀とお墓をどうするか、という方向性を示したものです。
内容をまとめると、
・お墓の形態や葬儀については、国民の日常生活に影響が及ぶことを極力少なくするようなあり方とする。
・葬儀については、伝統や先例を基本とするとともに、社会や国民意識の変化を踏まえる。
・御陵(お墓)は規模を縮小、両陛下の御陵が寄り添い一体的となるように建てる。
・土葬ではなく火葬がふさわしい。
ここでは、直接的にお葬式やお墓を「簡素に」するとは書かれていないのですが、おそらく昭和天皇のときと比べると予算も規模も縮小されることになりそうです。
財政支出をできるだけ少なくし、陵の規模も抑えて森林環境に配慮したい、という両陛下の意向と言われています。
また、現在の社会の流れに合わせ、「夫婦墓」にして、遺体は火葬、ということになりそうです。
これはまさに両陛下の「終活」の一つと言えるでしょう。
昭和天皇が崩御されたときは、確かに大々的にセレモニーが行われ、日本中が喪に服したため社会がストップするような状況でした。
それは今のご時世には合っていない、という陛下のお考えなのでしょう。
世間でもこの基本方針について、「身の処し方が見事」「墓を小さくして葬送を簡素化するのは自然な流れ。かっこいい」などと多くの好意的な意見が聞かれています。
終活で悔いのない人生を!
「終活」で重要な点は、とにかくご自分の考え・思いを、家族や親戚、利害関係のある人に伝えることです。何となく「分かってくれているだろう」「知っているだろう」と済ませてしまうことは厳禁です。
特に利害がからむことは、入念に表明しておくことが重要です。
また、 ご自分の考え・思いを伝えることで、相手の反発を招くこともあるでしょう。
そのときに、なぜそういう結論に至ったかについて、相手に丁寧に説明して理解を求めることが大切です。
最近は、芸能人の中尾彬・池波志乃夫妻の終活が話題になりました。
これからは、他の人がどんな終活をしているか、という情報も増えてくると思いますので、そちらもご参考にされてください。
また、同じような悩みを持ったご友人とざっくばらんに情報交換されるのもいいと思います。
「終活」で、限りある人生を有意義なものにしてください!