手元供養は定着するか - 第4回エンディング産業展(2018)より

8月22日~24日の3日間、東京ビッグサイトにて、葬送・終活に関するサービス専門展「第4回エンディング産業展」が開催されました。

今年も3日間で24000人以上の来場者を集め盛況のうちに幕を閉じました。

「墓じまい」の広がりや「永代供養墓」の増加もあって、エンディング産業で一大勢力の墓石材業界は最近はかなり苦しい状況ですが、他方でブームともなりつつある、永代供養墓などの合葬墓、納骨堂、樹木葬、そして散骨、手元供養といった分野に活路を求めており、新規の参入業者も増えています。

テレビなどマスメディアの注目度も高い

檀家離れに悩む寺院、今までのように檀家の葬式と法要だけではもはやお寺の運営どころか住職の生活もままならないという現実はいよいよ切実なものとなっています。
今回は、浄土真宗本願寺派(お西さん)と真宗大谷派(お東さん)がいずれも大きなブースで出展しているのが目を引きました。

どちらも来場者に対してお寺や葬儀に対する意識調査アンケートを行っており、お寺業界全体が相当な危機感を持っているだろうことが伺えました。

また、葬祭・終活に関するセミナー・シンポジウムは3日間で70以上も開催され、多くが満席という人気ぶり。
寺院関係者と思われる方の参加も多く、エンディング業界の盛り上がりとともに、が感じられました。

シンポジウムでは真剣に耳を傾ける参加者が多かった

手元供養の広がり

今回、かなり増えたな、という印象を持ったのが「手元供養」に関連する出展ブースでした。

ひと昔前は、納骨しないと成仏できない、などと言われ、遺骨をわざわざ家に置いておく、というのは一般的ではありませんでした。
しかし、お墓が高いことや、宗教的意識が少なくなってきたこともあり、遺骨を家に置いたり、身に着けたり、ということへの抵抗がなくなってきています。

最近「ダイヤモンド葬」という言葉が生まれていますが、遺骨をダイヤモンドに加工してアクセサリーにするなど、「骨」に対する嫌悪感さえ感じずにすむ方法も登場しています。
また、洋間でも違和感なく置いておける手元供養グッズが増えてきました。

リビングに置いても違和感の少ないグッズが増えている

手元供養では、異業種からの新規参入も目立ちます。
以前のエンディング産業展でも、家具屋さんが、仏壇ぽくなく洋風の部屋にも自然に置け、また遺骨も収納できる「手元供養家具」を開発し出展していました。

今では、すでにその手の家具はかなりメジャーになりつつありますが、今回出展されていた手元供養家具のひとつがこちらの「花供養墓」。

鏡台のようなスタイルですが、こちらを作成・販売している株式会社テンマックさんの本業は花屋さん。
結婚式などでの装花をメインとされているそうですが、そこで培った花の加工技術を生かし、枯れない生花を施した手元供養家具を開発、昨年より販売を開始したそうです。

今や、都市部で家の近くにお墓を手に入れるのは至難の業。
たまにしか行けないお墓に遺骨を置くくらいなら家に置いて、というのはある意味自然な流れでしょう。
仏壇を置く家はどんどん減っていますが、それに代わるものがなかったから減っただけなのかも知れません。
まだまだ手元供養は広がっていきそうです。

これからのエンディング産業展への期待

近年の終活の広がりもあって、大きな期待を集めて2015年から始まったエンディング産業展、当初は一般の来場者、つまり実際に終活を行っているような方の集客も目指していたと思われ、はせがわ、イオンといったいわゆるBtoC(企業対一般消費者)サービスの出展がかなり多かったのですが、そちらの集客はあまり伸びなかったと思われ(編集部推測)出展は年々減少、第4回の今年はほとんとがBtoB(企業対企業)サービスとなっていました。

第1回はイオンなどの出展もあった

一般の方が終活を始めるきっかけになるようなイベントになることを期待していただけに少し残念ではありますが、ターゲット層の年齢が高めであるため、やむを得ない部分もあったかもしれません。

ただ、来場者数が今年は昨年から微減(895人減)、第1回と比べても約3000人増とやや伸び悩んでいるのは、終活の盛り上がり方と比べると少ないでしょう。
せっかくお寺のトップが大きなブースを出しても、一般来場者が少なくては出展効果も思ったほどではないということになりかねず、今のままでは非常に残念です。

若手ベンチャー起業など、意欲の高い新規参入業者も増えている今です。
例えば開催期間に土日を入れ、新聞やネットでの告知も増やしたうえで、一般来場者向けのエリアを分かりやすく明示して配置するなどし、一般消費者が終活を考える場としておすすめできるような場にしてもらいたいと切望する次第です。

過去のエンディング産業展

エンディング産業展2017 東京ビッグサイトにて開催

いらないお寺は消えゆくのみ、生き残りを掛けた戦いが始まる ~エンディング産業展セミナーより~

エンディング産業展2016開催 ~盛り上がりを見せるエンディング関連業 そして課題も~

エンディング産業展2016 ~好評の第1回から8か月 台風直撃の中はじまりました!~

~エンディング産業展2015~に行ってきました!話題の散骨・手元供養から霊柩車まで

田辺 直輝(たなべ なおき)
 一墓一会編集長
 お墓アナリスト
 海洋散骨アドバイザー
 私がお墓関係の仕事に関わり始めたのは10年ほど前。
 たった10年の間ですが、お墓を持つ人、お寺さん、民間の墓地運営者など多くの方とお話しするにつけ、世の中のお墓事情は日に日にどんどん変わっていることを実感します。
 誰もが同じような場所に同じような墓を建て、同じように子孫に引き継いでいく、そんな時代はもう終わりました。
 「最近は先祖を敬う気持ちが薄れているのでは?先祖をもっと大切に。」というお寺や墓地の関係者の話も耳にします。
 しかし、何より大切にしなければならないのは、今生きている人の人生です。
年を取った人が安心して余生を送ることができ、遺される人も安心して見送ることができる、お墓を通じて、そんな皆様の人生のお手伝いができればと思っております。