お墓参りもYoutubeでいい・・・!?

 お墓にもどんどんITが入り込んでくる時代になってまいりました。

 ボタンを押せばビルの中に埋葬されている遺骨が目の前に現れてお墓参りができる、いわゆる室内型の移動式納骨堂は今やかなりメジャーになっていますし、そのお墓に故人の生前の動画や写真を登録してお墓参りのときに視聴することができる、なんていうところもあります。

 そんな中、ついに「お墓参り」自体もIT化でバーチャルに済ませてしまおう、というサービスが登場しました。
 そのまま「どこでもお墓参り」という名前のサービスを始めたのは、大分県と熊本県の県境に立つ金剛宝寺(こんごうほうじ)。
 昨年、Youtubeで法事が行える、というサービスをすでに始めていた金剛宝寺では、そのサービスをさらに充実させ、お墓参りにも対応できるようになったとのこと。

 利用できるのは金剛宝寺が運営する永代供養墓「天空陵」の使用者のみですが、1回なんと15,000円という低価格で読経付きのお墓参りをお願いできるという衝撃価格設定。

 その「どこでもお墓参り」の様子は、公式のサンプル動画で見ることができるのですが、動画のほとんどが読経の様子で終わるという若干リアクションに窮する出来ばえになっています。

どこでもお墓参り(サンプル)


どこでもお墓参り 本堂ver.(サンプル)

 Youtubeでの配信時間は約10分で、希望すれば有償で録画DVDをもらうことも可能。
 また、サービス運営者によれば、今後もさらにアプリ開発などを進めもっと手軽にお墓参り代行を頼める体制を作っていくそうです。

どこでもお墓参り(公式HP)
 
 お墓参りに行きたいのだけれどどうしても行けない、しかしお墓参りはしたい、そんな方にはありがたいサービスでしょう。
 それにしても、そこまでしてお墓参りの形にこだわるのか・・・、という違和感はやはり拭いきれません。

 昔にしてもお墓参りは毎日するわけにもいかないから仏壇や位牌を家においてそこで毎日お勤めしよう、となった部分もあるわけで、家に仏壇があればそこで拝めばよし、家に仏壇もないのにお墓参りを手軽にYoutubeで済まそうということならそのお墓参りは必要??という疑問にたどり着くわけです。

 そもそも、この「どこでもお墓参り」は永代供養墓に入った人についてしかお願いできないわけですが、永代供養墓はお寺さんが日々きれいに管理してくれているうえ彼岸やお盆にはお経を上げてくれるわけで、わざわざここまでしてお墓参りを提供するというのは、この金剛宝寺のロケーションが人里からかなり離れた山中にあることも関係していると言えるでしょう。

 このサービスについては、2ちゃんねるなどネット掲示板でも話題になっており、

「楽して儲けようとする根性が露骨すぎる」
「楽しようとしるのは遺族。
 儲けようとしてるのは坊主。」
「やっとかなきゃ後味悪いという精神的な保険みたいなもん・・・」
「行事の意味が失われて形骸化していく」
「こういうのは気持ちだから金払う側がなっとくするならいいのでは」

などと、口悪く辛辣ながらもなかなか本質を突いた意見が並んでいます。

 筆者(アラフォー)としては、このサービスを否定するつもりはさらさらなく、依頼者が納得のうえで依頼しているならばむしろ良いことだと思います。
 ただ、このサービスを利用して「形だけのお墓参り」を済ませることが、あたかも故人の供養の方法の一つであるようになるかもしれない、ということには危惧を抱かざるを得ません。
 
 もっとも、金剛宝寺では「気持ちはあるけど、時間が無い、車が無い、子供がいて気を使う、費用が無い、そんな社会の悩みに対して私たちが解決のお手伝いさせていただきたいと思います。」とアナウンスしており、そういう前提でのサービス提供でないことは強調されているわけです。

 そこには、「お墓参りって行かなくったってYoutubeですませればいい」というノリで拡散してしまう我々メディアの責任というものも痛感する次第なのでありますが・・・。