高いお墓はもういらない!? – お墓は100万円以内という時代に

 高齢化多死社会を迎え、厚生労働省の調べでは15年後には年間死亡数は160万人を超えると言われています。
 東京都や横浜市などは将来的に墓地が不足すると予想し、無縁墓地の整理や合葬型墓地の整備などを進める方針だそう。

 一方で、墓石を販売している石材店の売上は1990年代後半をピークにかなり下がっています。
 バブル時代には人々は競って豪華な墓を求め、「早く買わないとお墓が買えなくなる」とまで言われていました。都心出発の霊園見学バスツアーは大人気、家と共に立派なお墓を建てることが人々のステータスでした。

 しかし、バブル崩壊から20年以上経った今では、「高いお墓」の需要が低下、ネットの広まりによって霊園の費用の比較・墓石の相見積もりも容易になったことなどで、お墓の値段は当時と比べるとかなり下がってきました。

お墓価格帯の下落

 墓石を購入する場合、寺院や霊園の指定石材店を利用しなければならないケースも多くあります。そうなると、消費者は墓地を決定した時点で特定の石材店をあてがわれ、そこで墓石を選び価格交渉も行うことになる、つまり、他の石材店と比較することもできず、店の言い値で買うことになるわけです。(そもそも指定石材店が1社独占の場合は、比較することはそもそもできなかったりします。)

 お墓の販売業者・石材店などに「お墓を買いたいが、おおよそどのくらいの金額がかかりますか?」と尋ねると、おそらく「200~300万円くらいでしょう。」という答えが返ってくるのが普通だと思います。
 お墓の購入費は、土地の使用権料(永代使用料)と墓石代の合計ですが、都市部では使用権料が割高で区画面積が小さくなりがちなため墓石代が下がり、反対に地方では使用権料が安いため区画面積は広めで墓石代が高くなる、ならすとどちらも200~300万円くらいになるという理屈なのです。

 しかし、200~300万円と言えば、そこそこの新車が買えてしまう値段。年金生活の高齢者にとっては1年の生活費以上ともなる小さくない金額ですよね。

 よって、近年はお墓を買うにあたり予算を設定してくる人が増えています。
 また先ほど述べたように、最近ではネットで霊園や石材店を比較しやすくなったり、相見積もりをネットから簡単に依頼できるようになったことで、値段交渉がしやすくなりました。

 そこで出てくる数字が「100万円」なのです。

高いお墓はもはや売れない

 最近は、永代供養墓であれば10万円くらいから買うこともできます。ただ、やはり個別のお墓がいい、という需要が根強いのも事実。
 個別のお墓でも100万円出せば結構きちんとしたものが買える、そうした市場が形成されつつあるようです。
 それは、郊外だけでなく、実は都心でも同じだったりします。

 例えば、都市型納骨堂の先駆けでもある東京都港区の麻布浄苑は1体用が100万円からという設定、同じく都市型納骨堂で新宿駅から徒歩3分という好立地にある瑠璃光院白蓮華堂も同じく1体用100万円から、東京都港区の麻布の杜曹溪寺墓苑では、一般墓タイプの墓(0.25㎡)を永代使用料・墓石代込の98万円で販売しています。

 郊外に目を移すと、東京都青梅市の大多摩霊園では0.8㎡の一般墓所が永代使用料・墓石代込の98万円から、横浜市のメモリアルサンステージでは0.36㎡の一般墓所が永代使用料・墓石代込の98万円からで販売されています。

 最近増えているのが敷地1㎡未満のお墓。1㎡未満というとろくな墓が立たないのでは?と思ってしまうのですが、現在はその面積に合った良い墓石が多く開発されており、意外なほどに小ささを感じさせません。

 例えば、こちらの写真は大多摩霊園の0.5㎡の墓所。
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 墓石は、区画内ほぼ一杯に立っているのですが、竿石の下に納骨庫(カロート)がありその手前壁面は墓誌、隣のお墓は近いものの二人並んでお参りするのにも違和感は感じません。
 また、隣が近いというデメリットは、裏を返せば草が生い茂る地面がないということなので、雑草が生えず手入れが非常に楽というメリットにもなります。

 ちなみに、このお墓は込み込みなんと62万円からという手軽さ。現地の担当者によると、「永代供養墓でもいいかな、と思って見に来たお客様が、ちょっと頑張れば普通のお墓が手に入るならこちらを」と選ぶケースも非常に多いそうなのです。
 確かに、お墓は高いからなくてもいいかな・・・、というあまり期待しない気持ちで見にきたとすれば、想像以上にきちんとしたお墓に驚くことでしょう。

100万円の壁がもうそこに

 霊園や石材店は、「100万円でいいお墓がありますよ!」と積極的に宣伝することはまだまだ少ないかと思います。特に石材店は、墓石の大きさと利益が直結しますからなおさらでしょう。

 しかし、最近区画を増設した霊園、最近開園した霊園などを中心に、「100万円あれば買える」お墓を商品として売り出していることは、もはやまぎれもない事実。

 程なく、100万円のお墓を比べて、自分に合ったものを選べる時代が来るのではないでしょうか。
 ようやく「お墓業界」がまっとうな競争を始めた、とも言えるのかも知れません。