ポケモンGOでお墓にGO!はアリか?

 先だってアメリカで配信され熱狂的大ブームを引き起こしていた「ポケモンGO」が、2016年7月22日、ついに日本でも配信開始された。

 街中では至る所に歩きスマホでポケモンを探す人が見られ、珍しいポケモンが見つけられるという公園には人があふれていたり、車の運転をしながらポケモンをしていた人があちこちで検挙されたりあるいは事故を起こしたりと、まさに「ポケモン」が社会現象となっている。

 警察庁の発表では、7月25日昼前までで交通事故が全国で36件発生、交通違反の取り締まりが71件に上っているという。

 そのほか、東京電力福島第一原発、第二原発内や、熊本城内の大震災による被災で立ち入り禁止区域となっている場所に「レアポケモン」が出た、箱根大涌谷の立ち入り規制区域にポケストップが設置されている、など、様々な問題が起こっている。東京電力は、社員や作業員らに対し原発構内での「ポケモンGO」の使用を禁じたほか、ゲームの開発会社に対して原発でポケモンを出現させたりアイテム入手場所の設定をしたりしないよう文書で申し入れたという。

ポケモンGO熱中、クマに気づかず接近も 交通事故多発

今さら聞けない「ポケモンGO」ってどんなゲーム!?

 ポケモンGOについて簡単に説明しよう。

 ポケモンGOは、単純に言えば「ポケモン」と呼ばれるモンスターをコレクションしていくゲーム。「ポケモン」にはたくさんの種類があって、中にはレアなものもあるのだが、この「ポケモン」が現実世界の様々な場所に出現する。ポケモンGOを起動しながら移動すると、時々ポケモンが出現し、それを捕獲すると自分のコレクションにすることができる。ポケモンが出現するとスマホのカメラ映像と連動し、あたかも現実世界にポケモンが現れたような感覚を味わえるのが、ポケモンGOが大ヒットしている一つの理由だろう。

 自分が移動しないことにはポケモンと出会えず、またアイテムとして取得したモンスターの卵をかえすのにも歩いての移動が必要となることから、町中に歩きスマホが大発生することになる。

 そして、ポケモンGOの世界には、「ポケストップ」「ジム」という2つの施設が存在する。「ポケストップ」はアイテムをゲットでき、「ジム」では自分のモンスターを他ユーザーが持っているモンスターと戦わせることができる。これらの施設も現実世界のマップ上の様々な場所に設定されているのだが、施設を利用するためにはそのすぐ近くに自分が居る必要がある。
 そのため、これらの施設の周囲には必然的に人が集まることになる。
 「ポケストップ」ではモンスターを呼び寄せる有料アイテムを使うことができ、それを使うと自分のみならず他のユーザーもモンスター出現率アップの恩恵に預かることができるため、その周辺はさらに人が集まる。

 また、ポケモンは不規則に出現するということなのだが、出現する場所は全ユーザー同じになるよう設定されているため、レアなポケモンが特定の場所に出現するとそれを捕獲するために多くの人が同じ場所に殺到することになるのだ。

 こういった理由で、ポケストップが設定された都心繁華街の広場や、レアモンスターが出現した公園などといった場所に、スマホを持ってウロウロしたり居座ったりするポケモンGOプレーヤーが多数たむろすることになるのだ。
 

お墓もポケモン騒動に巻き込まれる!?

 「ポケモンGO」騒動に巻き込まれるのは、お墓や寺院仏閣も例外ではない。

高野山の石田三成の墓がジムになっていたり、

池上の力道山の墓がジムになっていたり、

海外では、ピカチュウが大好きだった弟の墓でピカチュウを見つけたという例も。

ポケストップは設定場所がかなり多いため、お墓がポケストップになっているというのはザラ。
雑司ヶ谷霊園の有名人の墓がポケストップになっているというつぶやきも。

 青山霊園内にも、多数のポケストップが設置されている。ざっと20か所くらいだろうか。

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青山霊園のポケストップ

 実はこのポケストップ、ポケモンGOを作ったNiantic社が開発した「Ingress」という陣取りゲームがあるのだが、そのゲームでユーザーが陣地として申請し運営側が受理した場所のデータを流用している。申請した陣地は何でも受理されるわけではないが公共の施設や分かりやすいランドマークだと受理されやすいため、公園のような公共施設や観光施設、お店や看板、石碑や銅像などといったものが多くなっている。
 
 青山霊園では、入口近くの乃木将軍墓道の標識、畝傍の森の入口標識、忠犬ハチ公の碑などがポケストップになっているが、お墓もポケストップに指定されている。
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 その中には一般の人のお墓もあるのだ。
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いずれも英語なので、おそらく外国人旅行者が登録したのだろうか。
ほかのスポットも英語で登録されているところが多い。

 
 
 今のところ、力道山のお墓の周りにポケモンユーザーが集まっているという話も聞かないし、どこぞの霊園がポケモンユーザーだらけ、という話はないようだ。しかし、Twitterを見る限り、ポケモンを探していてお墓に来てしまったとか、雑司ヶ谷霊園でポケモンを探している、などといったツィートがあるので、実際墓地でポケモンGOをプレイしているユーザーはいる。
 ポケストップに設定されたとしてもそれだけではわざわざユーザーが来る理由にはならないものの、もしひとたびレアモンスターなど出現しようものなら、おそらくそこは墓地であろうとも、一瞬でポケモンユーザーで溢れかえることだろう。

 しかも、それは運営者のさじ加減一つで決まってしまうのだから厄介だ。

墓地でポケモンGOで遊ぶのはいいの?

 では、墓地でポケモンGOで遊ぶのはいいのか?という話。

 まず、青山霊園のような公園墓地の場合は敷地には原則誰でも入れるし、普段も散歩や花見で訪れる人も多いので、遊歩道でポケモンGOをするくらいであれば許容されるべきだろう。しかし、個々の墓所に立ち入ることは当然禁止されている。

 寺院墓地のような霊園の場合は、墓地の敷地が私有地になるので、お墓参り以外の目的で入ることはできない。場合によっては住居不法侵入罪が成立することもある。墓石を破損したり倒したりすれば、器物損壊の罪にもあるだろう。
 
 一方、モラル的に、そもそも墓地でゲームなどやるべきでない、という話もある。
 実際、海外ではあるが、戦没者が多く眠るアメリカのアーリントン国立墓地にはポケモン目当ての人々が殺到し、墓地側が公式ツイッターでポケモン自粛要請の声明を発表するという事態に発展した。
 
 日本でも、墓地ではないが、伊勢神宮や出雲大社などが草々にポケモンGOのプレイ禁止を決めるなど、多くの寺社がポケモン自粛を求めている。

 先ほど述べたとおり、ひとたびレアモンスターなど出現しようものなら、一瞬でポケモンユーザーで溢れかえることなる。深夜であろうとも関係なく人が集まり、道は違法駐車であふれ、大騒ぎをする者もあり、後に残るのは打ち捨てられたゴミの山、という悲惨な目にあった所もある。

 ポケモンGOユーザーには、強いモラル意識を持ってゲームを楽しんで欲しいと願う一方、墓地の所有者・管理者におかれては、無関係を装わず、万一ポケモンGOのホットスポットになってしまったときに備え、あらかじめスマホゲームの禁止をうたったり、ジムやポケストップが設定されてしまっている場合には運営者に削除を求めるなど、可能な限りの対策をされるべきであろうと思う。

 なお、ポケモンGOの運営者は、任天堂ではなく、Niantic, Inc.と株式会社ポケモンであるので、そちらもご注意を。

[追記]  総務省と消費者庁は、7月27日、「Pokémon GOに関する注意喚起」を文書で公表した。
 事故やトラブルが国内外で相次いでいることに鑑み、自分が事故やトラブルの被害に遭うだけでなく周りの人々にも迷惑を掛ける可能性があることから、特定のゲームについて、その配信からわずか5日にして注意喚起を行うという異例の事態となった。

 文書の中では、ユーザーに対してのプレイ中の注意を促すとともに、ポケストップやジムの削除リクエストができることとその具体的な方法にも言及している。ぜひご一読されたい。

Pokémon GO に関する注意喚起(消費者庁・総務省)
ポケストップやジムについて報告する(ポケモンGO公式サイト)

担当:田辺直輝