ペット霊園が突如閉園! 霊園の閉鎖は対岸の火事なのか!?

 この週末、とある”つぶやき”が多くのシェアを集めて話題になっています。

 大阪府のペット霊園が突如閉園となり、供養塔は壊され、お骨とおぼしきものが山に放置されていたというのです。

 こちらは、それをつぶやいた蜂蜜禰悶@千本カツラさんのツィート。

 このツィートはすでに17000件以上もリツイートされ、霊園閉園のニュースがYahooニューストップに登場するという事態にまで発展。

枚方市のペット霊園が突然の閉鎖
 
 ネット上もペット愛好者を中心に大騒ぎ。この事態を悲しむ声、霊園業者を非難する声が渦巻いています。
 当サイトも霊園の電話番号に連絡を試みましたがつながらず。霊園のサイトも昨日より接続できなくなってしまっているようです。

 さて、このような業者の一方的な行為は許されるのでしょうか!?
 今回の事件では、ペット専用墓地の問題点とリスクがあらわになったと言えます。

ペット霊園と人の霊園の違いとは?

 人用の墓地を運営するには、法律上、自治体か宗教法人などの公益法人であることが必要です。
 一見民間業者が運営しているように見える一般の霊園も、運営母体は必ず宗教法人になっています。
 そのうえ、宗教法人が倒産などした場合も、墓地自体は公共性の観点からつぶしたりせず、他の法人が引き継いで運営されていく場合がほとんどです。

 一方、ペット墓地にはそのような縛りはありません。誰でも、どんな会社でも開設、運営できるのです。
 運営会社がつぶれてペット墓地の引き受け先がなければ、墓地はなくなってしまいます。極論すれば、運営会社がつぶれなくとも運営をやめてしまうこともできるのです。

 また、遺骨を掘り返すことについても、人の墓や骨を勝手に壊したり掘り返したりすると刑法で罰せられますが、ペットの遺骨は法律上は物と同じ扱いであるため罪に問うためのハードルがかなり上がってしまうのです。

 今回の事件についても、遺骨や墓標が自分の所有物であることを証明しない限り、賠償の請求や告訴は難しいかも知れません。そもそも、霊園に入る費用が1~4万円程度と安いため、賠償を得られたとしても多くの額を期待するのは困難でしょう。

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ホームページも今は閉鎖されている

評判が良いペット霊園だったのに・・・

 今回問題になっている「宝塔」は、ネット上の情報を確認する限り、悪いものではなかったようです。
 1万円からとかなり安い費用ながら、火葬と読経まで行ってくれるというお得な内容。経営者の対応も良く、自分のペットを供養してあげたいという人からは多くの引き合いがあったようです。
 
 このような事態になってしまった理由としては、本堂が火事になってしまったからとか、先代経営者が亡くなったからではとか、様々な憶測を呼んでいますが、確たることはまだわかっていません。

 ただ一つ言えることは、一般の法人が運営しているペット専門霊園には人のお墓のような永続性を期待してはいけない、ということなのです。

人用の墓地・霊園は大丈夫なのか?

 さて、今回の事件を契機に、ネット上では、「人間用の霊園だって同じことが起こるだろう」という発言も見られます。
 
 しかし、先ほども述べたとおり、人間用の墓地を運営するには法人格その他、厳しい条件があるため、それなりの永続性は担保されており、ペット霊園のような心配はないと思います。
 実際、とある霊園では、住職が霊園の建設費を使い込んでしまって資金が回らなくなり宗教法人がつぶれてしまったものの、しばらくの間管財人が霊園を運営して新たな引き受け先を見つけ、霊園は引き続き問題なく運営され続けた、という事例もあるくらいです。

 ただ、永続性にややリスクが懸念される霊園もあります。
 それは、最近増えている、ビル型の大型自動搬送式墓地(納骨堂)です。
 
 この方式の墓地は、多額な初期投資費用に加え、電気代や施設のメンテナンスなどに費用がかさみます。加えて、東京都ではビル型の納骨堂に固定資産税がかかるという裁判例も出ており、ビルの固定資産税もかかってくるのです。
 これら、通常の墓地には発生しない多額のランニング費用が、数十年先に経営に重くのしかかってくる可能性が否定できません。

 例えば現在都心を中心に林立しているタワーマンションは、40~50年後には住民の高齢化、施設の老朽化等によって空家が増えた場合、予定していた管理費が集まらないため維持費をまかなえなくなってしまうのではないか、という心配がされています。
 タワーマンションも、エレベーターや立体駐車場、その他共用部分などに多額の維持費が必要だからです。

 同様に、ビル型納骨堂も、将来もし利用者が減ってしまった場合維持費が本当に確実にまかなえるのか、また何十年も後にビルの建て替えが必要となったとき、同様の設備が維持されるのか、その点は特段明らかにされていないのです。
 
 
 とはいえ、何物にも永遠なんてありませんよね。(元も子もないですが)
 お墓選びは、自分が納得できるものをしっかり選びたいものです。

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<追記>
 その後の調査によれば、このペット霊園一帯は周辺住民の共同管理地であり、勝手にペット霊園の運営を始めた管理者は近隣住民から訴訟をおこされて敗訴。ペット霊園を原状回復して土地を返還しなければならなかったようです。

 それが事実とすると、霊園管理者はかなり前から霊園の閉鎖を計画しており、それを利用者に一切伝えず墓標・遺骨一切を勝手に撤去したことになります。
 ペット霊園の利用者募集は4月20日までWebサイト上で行われており、最近霊園の利用を開始した利用者などがいるならば詐欺罪等に問われる可能性さえ否定できません。

 今回のツイート拡散以降、多くの利用者が霊園のあった場所を訪れ悲しみに暮れているようです。
 霊園管理者の対応が望まれるところです。

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<追記2>
 本件については、「宝塔」の近傍に位置するひらかた動物霊園が、宝塔利用者の遺骨の受入れを検討しているとのこと。

とりあえず良かった(´θ`llll)しかし「これから」が勝負だ~ペット霊園問題と動物行政。(枚方市会議員 田口よしのりのブログより)

 ひらかた動物霊園の公式HPでも確認することができます。

枚方市のペット霊園「宝塔」のご遺骨について、複数名のご家族様及び関係者の方からこちらのほうに引き取れないかというご相談を受けております。当霊園といたしても今回の件は大変残念に思い、ご家族様が悲しんで心痛める姿を見てとても心苦しく思っております。(中略)社内で検討させて頂いた結果、こちらでのご納骨及びご供養をお手伝いさせていただきたく思っております。しかしながらこの問題は私どもの一存で決めることではなく、ご家族様のご同意が必要と考えております。そのため下記の連絡先にご家族様からのご意見をお待ちしておりますので、ご協力よろしくお願い申し上げます。(一部抜粋)

ペット霊園「宝塔」からのご遺骨受け入れについて(ひらかた動物霊園公式HPより)

 市会議員までが動く大事になっています。
 「宝塔」をご利用されていた方は、一度ひらかた動物霊園にご相談されてはいかがでしょうか。

田辺 直輝(たなべ なおき)
 一墓一会編集長
 お墓アナリスト
 海洋散骨アドバイザー
 私がお墓関係の仕事に関わり始めたのは10年ほど前。
 たった10年の間ですが、お墓を持つ人、お寺さん、民間の墓地運営者など多くの方とお話しするにつけ、世の中のお墓事情は日に日にどんどん変わっていることを実感します。
 誰もが同じような場所に同じような墓を建て、同じように子孫に引き継いでいく、そんな時代はもう終わりました。
 「最近は先祖を敬う気持ちが薄れているのでは?先祖をもっと大切に。」というお寺や墓地の関係者の話も耳にします。
 しかし、何より大切にしなければならないのは、今生きている人の人生です。
年を取った人が安心して余生を送ることができ、遺される人も安心して見送ることができる、お墓を通じて、そんな皆様の人生のお手伝いができればと思っております。