家族・夫婦・親子で話し合いたい「お墓」と「墓じまい」(後編)

年末年始、家族・親子で話し合いたい特集の後編は「墓じまい」についてです。

前編でも述べたとおり、家族で集まれるときは、家・家族のお墓についてじっくり家族で話ができる数少ないチャンスです。特に「墓じまい」を検討されている場合など、一朝一夕に決められることではありませんので、早めに手を打つことも肝腎でしょう。

墓じまいとその理由

墓じまいとは?
「墓じまい」とは、現在のお墓を撤去することです。近年では、現在のお墓を閉じて、その遺骨を別のお墓に移すことも含めて「墓じまい」と言うことも増えています。
 
墓じまいをする理由
墓じまいをする理由とは何なのでしょうか?
主なケースは以下の3つです。
 
1)自分がお墓の面倒を見ることができない
自分がお墓から遠くに住んでいる、体力的に墓の世話が厳しくなった、もしくは、それまでお墓の世話をしていた人が亡くなったり、体力的に厳しくなったりといったことが原因で、自分がお墓の面倒を見なければいけない立場にいながら墓参りができない、というケース
 
2)自分が死んだらお墓の面倒を見る人がいない
現在自分がお墓の面倒を見ているが、子がいない、嫁に行った娘しかいない、子は遠方に住んでいる、などの理由で跡継ぎがいない、というケース
 
3)身寄りがない親戚等のお墓を引き受けた
親戚などが亡くなった後その家の跡継ぎがいなかった場合に、そのお墓の世話のお鉢が回ってくるケース

近年は親子、特に親と長男家族が別々に住むことは珍しくなくなったため、1)2)のケースは後を絶ちません。
特に最近増えているのは2)、「子に墓の世話をさせるのは忍びない」と親が墓を閉じようとするケースです。

「お墓の世話」という観点からは合理的な「墓じまい」ではあるのですが、このケースにあてはまった場合、本当に「墓じまい」をするべきなのでしょうか。
 

墓じまいのメリット・デメリット


墓じまいのメリット
メリットは、何より「お墓の世話が無理なく継続できる」点です。
お墓の面倒を見る人がお墓のそばに住んでいることで、お墓参り・お墓掃除を続けられ、お墓が荒れることもなく、しばらくは無縁墓になる心配もありません。

家族が皆安心できるのであれば、それは何より素晴らしい墓じまいなのです。

墓じまいのデメリット
デメリットは、「ルーツが途切れてしまうこと」です。

先祖代々の土地は手放したくない、という人は多いように、お墓に関しても少し前までは「先祖代々が引き継いでいく」のが当たり前であり、お墓を次代に引き継げない、というのはある意味恥ずかしいことでさえありました。
ただ、現在はそのような価値観はだいぶ薄れてきました。

しかし、何代もに渡って引き継がれたお墓には、その家・家族の歴史・ルーツそのものでもあります。それを捨ててしまうのは勿体ないことでもあります。

ある地方のお寺の住職は、「そのお寺に行けば、自分の先祖代々の情報がすべて残っているのです。それは素晴らしいことだと思いませんか?お墓参りに来られないというのは、そんなに悩むことではない。来れるときに来れるよう残しておいてもいい。」と言っていました。

お寺では、「過去帳」に檀家さんのお墓に埋葬されている方の情報が残されているのが一般的です。一旦檀家を辞めてしまえば、もうその情報に触れることはかなわないのです。
 

あなたは墓じまいしますか?

これらのメリット・デメリットをどう捉えるかは、それぞれの家族次第です。
特にデメリットについては、家族によっては重要ではないかも知れません。

しかし、上に述べたように、「本当は家のお墓を残したいのだけど、子供に世話させるのが申し訳ないので、今のうちに閉じてしまおう」という人が多いのも事実。
一方的な思い込みだけで「迷惑かも」と決めつけるのは、お互いにとって不幸かもしれません。

ある霊園の永代供養墓担当者によると、跡継ぎがいながらも永代供養墓を探している人というのは、「迷惑をかけないように」という意識が強すぎることが多い、と言います。実際に、永代供養墓をいろいろ見学したものの、結果的に現在の古いお墓を維持することに落ち着いた、というケースもあるそうです。

また逆もしかり、面倒を見切れないと子供が言うお墓を親側が押し付けるのも、かえってお墓への愛着が薄れてしまうでしょう。

前編でも述べたとおり、お墓は「安心して今を幸せに生きるためのもの」です。
それぞれの思いを、お正月、お互いに話し合ってみるのも良いのではないでしょうか。

年末年始、家族・親子で話し合いたい「お墓」と「墓じまい」(前編)

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