2008年に始まったふるさと納税は、返礼品の充実ぶりから大きな人気を呼び、2016年には200万人以上もの人が利用するまでになりました。
返礼品は、当初はそれぞれの地域の食品を中心とする特産品が多かったものの、電化製品やサービスなども増え、今や日本中の名産品を返礼品にラインナップするネットショップのような自治体まで現れました。
日本の各自治体は寄付金を集めるため、あの手この手と知恵をしぼっており、個性的な返礼品も増えてきています。
さてその中、2018年2月に長野県小諸市が新たに始めた返礼品が話題となりました。
永代供養墓の埋葬権が返礼品
それは、小諸市営高峯聖地公園にある合葬式聖地の「永代埋葬権」です。
(トップの画像はその合葬式聖地の写真(小諸市リリース画像より))
「さわやか信州小諸・永代埋葬権」をふるさと納税返礼品に登録します
この「合葬式聖地」は、一部が個別埋蔵方式、一部が共同埋葬方式となっている合葬式墓地で、2008年(平成20年)に完成しました。
ふるさと納税では、24万円を寄付すると、返礼として「共同埋葬方式」での埋葬権がもらえるのです。
反響は上々のようで、長野県ないのみならず、東京、青森、富山、京都などから開始3か月間で20件以上の問い合わせがあったそうです。
また、実際に寄付を行い埋葬権を取得した人もすでに5組6人に上るそうです。
新聞社の取材によれば、墓所の立地環境が素晴らしい、という方も居たとのこと。
確かに、ここ高峯聖地公園は浅間山のふもとに位置し、自然も豊か、眼下に小諸・佐久周辺の盆地を見下ろせる素晴らしい眺望があります。
地理的にも、避暑地軽井沢のすぐお隣、都心からは2時間から2時間半ほどで来ることができます。
ふるさと納税で永代供養墓は難しい
ところで、「24万円か…、合葬式の永代供養墓にしては少し高いかな」と思った方がいらっしゃるかもしれません。
まさに、そこが本件のポイントです。
24万円をふるさと納税で支払う場合、全額が控除される(つまり実質負担2000円で手に入れる)には、年収が1100万円程度というかなりの高所得者でなければなりません。
年収1000万円の人は日本人の4%程度と言われていますので、ふるさと納税で小諸市の合葬式墓地の埋葬権を手に入れることができる人はかなり少ないことが分かります。
しかもこの小諸市営高峯聖地公園の合葬式聖地ですが、ふるさと納税で手に入れなくても、実は小諸市に申し込めば7万円で買う(埋葬権を取得する)ことができてしまうのです。(市外居住者の場合)
ではなぜ7万円のものが24万円で?となりますが、それもこれも総務省が異常な返礼合戦の過熱ぶりを抑えようと、2017年にふるさと納税の返礼品の価格について寄付額の3割までに抑えるよう全国の自治体に要請したことが原因です。
24万円の3割というと、まさに7万円です。
小諸市としても、24万円でふるさと納税の返礼品にしたものの、合葬墓の知名度が上がれば御の字、くらいで考えていたと思われ、想定以上にメディアに取り上げられ問い合わせが来て驚いているようです。
実際、日本の平均と言われる年収500万円の人が、実質負担2000円で手にいれようとすると、埋葬権の元値は1万~1万5000円くらいに抑えなければならず、これはかなり非現実的です。
先日、秋田市が市営墓地に合葬墓を建設し利用者を募集したところ希望者が殺到して多くの人が申込みできず、秋田市は二次募集を検討している、というニュースがありました。
合葬墓の人気ぶりを示すニュースのようにも見えますが、実はこの合葬墓の利用料は17,000円という破格の安さでした。この価格設定は、希望者が殺到した一因でしょう。
秋田市平和公園の「合葬墓」、申し込み想定上回り2回目の受け付けへ
自治体の運営する合葬墓は、当然その自治体の税収で建設することになりますので、原則自治体住民に利益が還元する形になります。
従ってほとんどの公営墓地では申込資格は在住者に限定されており、そうでない自治体でも非在住者には在住者より高い価格で提供されています。まさに小諸市も後者のケースです。
多くの自治体は世間の要望の高まりを受けてようやく合葬墓を建設したところ、または建設に向けて手をつけたところであり、非在住者への埋葬権の提供にまでとても手が回らない状況です。
ふるさと納税でお手軽に永代供養墓を手に入れるとすれば、かなり提供者側の価格設定のハードルが高いため、今後いろいろな自治体に広がるのはなかなか難しいかも知れませんね……。