永代供養墓がという選択肢がいよいよ一般的となり、民営霊園でも寺院でも「供養塔」といわれるような永代供養墓をバンバン建てています。
少子高齢化の今、墓の跡継ぎがいないなんてことは珍しくも何ともなくなりましたが、そもそも「先祖代々のお墓に自分も入る」という意識が薄れてきているようですね。
ダイヤモンド社が全国約1万人(30~79歳)を対象に行ったアンケートでは、「自分が先祖代々の墓に入りたい」という人は22.1%という低さ。
一方で、散骨や樹木葬など、自然に還ることを希望した人は約20%に上り、今の家族でお墓に入ることを希望する人が16.6%と、代々引き継ぐ形のお墓にこだわらない人が3分の1を超えています。
もちろん、対象者には先祖代々のお墓を持っていない人も含まれているでしょうから、「現在の先祖のお墓を継がなくてもいい」という人が多数、と一概には言えないものの、「自分のお墓を子々孫々守っていってほしい」と望んでいる人はかなり減っていることが分かります。
もはや、「お墓を代々継いで行くのが当たり前」「お墓を継いでくれる人がいないなんて恥ずかしい」そんな意識は過去の遺物となりつつあります。

(稲城府中メモリアルパーク)
返還することが前提のお墓
そんな中、最近登場し、筆者がこれから一般的になるであろうと推測する新しいお墓の形が、「普通のお墓だが返還することが前提になっているお墓」。
普通のお墓では、「お墓を買う」というのは墓地の「永代使用権」をもらってお墓を建てるわけで、要は借地をしているようなものです。
「永代」!?これがまたよく分からん言葉なんです。「代が続く限り」とも読めますが、実際の意味は「永遠」に近いんです。
永遠と言いつつも無縁になったらしっかりお寺に取り上げられちゃいます。
なんともそのあたりがファジー(死語)な実に日本的な言葉ですよね。
一方この新しいタイプのお墓では、そのあたりがはっきりしております。
普通のお墓と同じように墓地区画の使用権を取得(いわゆる墓地を購入)しそこに自分で墓石を建てますが、お墓を守る人がいなくなった場合や一定期間が経過した後は霊園側でお墓を撤去・整地し、遺骨を永代供養墓に改葬してくれるのです。
墓地の使用期間は、基本永代とし「お墓を守る人(使用名義人)がいなくなるまで」とするところと、例えば17回忌まで33回忌までというように「有期限」とするところがあります。
有期限のところは使用期間終了時、使用期間を延長するか、もしくは延長しないで墓を撤去し永代供養墓に改葬するかを選ぶことができます。
将来的な「永代供養墓での合葬」を前提としており、跡継ぎがいない場合でも安心というわけです。
こういったお墓は、「永代供養付き墓地」「有期限墓地」などと呼ばれています。
みんなと一緒にされてしまう合葬墓ではなく個別の普通のお墓を持てるうえに、跡継ぎがいなくても、または子供が墓を引き継ぐ気がなくなってしまった場合でも、引き続き供養してもらえるという、ある意味いいところ取りのお墓と言えます。
永代供養付き墓地がある霊園
こうした「永代供養付き墓地」は、都市部の霊園を中心に増えてきていますので、いくつかご紹介します。
◆町田いずみ浄苑フォレストパーク
NPO法人エンディングセンター(井上治代代表)の「桜葬墓地」を併設するなど、永代供養墓に早くから取り組んでいる霊園の一つ。
民間霊園での樹木葬の先駆けとなる「桜葬」を設立しています。
こちらでは、「永代供養付墓地安心プラン」が用意されています。
・墓地使用期間:
17年または33年
・期間終了時 :
更新
または苑内永代供養墓に改葬
(改葬費は無料)
・費用(例) :
1.35㎡区画17年間 約2,200,000円
(使用料・墓石工事費用・期間中管理料込)
町田いずみ浄苑フォレストパーク [詳細]
◆金剛生駒霊園「ゆとり」「きらら」
TVCMも放映している関西では有名な霊園です。
こちらでは、使用期間に期限はありませんが、跡継ぎがいなくなった段階でお墓を撤去し永代供養墓に改葬してもらえます。
・墓地使用期間:
定めなし
・期間終了時 :
園内永代供養墓に改葬
・費用(例) :
1.3㎡(ゆとり) 1,300,000円
(使用料・墓石工事費用込、管理料別)
◆善称寺(和歌山県)
和歌山市の中心に建つ善称寺、こちらは、「すべての一般墓地が永代供養墓付き」という、かなり先進的な取り組みをされている寺院です。
・墓地使用期間:
定めなし
・期間終了時 :
園内永代供養墓「ゆずり葉の碑」に改葬
・費用(例) :
1.3㎡(ゆとり) 1,309,140円~
(使用料・墓石工事費用込、管理料別)
◆鎌倉霊園
鎌倉市にある日本でも有数の高級大規模霊園。著名人がたくさん眠っています。
こちらは、一般区画に「有限墓所制度」を設け、購入済みの区画でも、名義人の死後一定期間で永代供養墓に改葬してもらえます。
・墓地使用期間:
使用名義人の死後1~20年で指定
・期間終了時 :
園内永代供養墓「ふじみ」に改葬
・費用(例) :
区画により異なる
鎌倉霊園 [詳細]
永代供養付き墓地がある霊園
さて、先ほど「永代供養付き墓地」を”新しい形”と言いましたが、果たして実際そうなのでしょうか?
今までもずっと、寺院では、跡継ぎがいなくなって無縁仏となった墓については、撤去し、無縁塔や無縁塚を設けてそこに祀り供養してきています。
民間の霊園や公営の霊園でも定期的に無縁墓の整理を行い、無縁塚に遺骨を改葬し祀っています。
お寺がつぶれてしまったり墓地が廃墟になってしまったりといった少数の例を除き、無縁となった御霊も供養されているのが普通なんです。
だから、「永代供養付き墓地」は、無縁塚を少々グレードアップして呼び名を変えただけの普通のお墓、と言えなくもないのです。
「無縁塚」「無縁仏」という言葉には、誰もお世話する人がいなくなってしまった寂しい仏様、子々孫々引き継ぐ者を引き継げなかった残念な家・・・、というような極めてネガティブなにおいがプンプンしますよね。
家の財産や田畑を子孫代々に引き継いでための「家」という縦のつながりは、サラリーマンが多数となってしまった今、もはや絶滅危惧種です。
「永代供養」という言葉自体が、「跡継ぎがいないこと」を以って「無縁」とくくること自体がもはや現代の世にそぐわなくなってきた、ということの証なのではないでしょうか。

永遠の墓なんてあるの!?
「永代使用権」の取得というのは、そもそも「代が続かなくなった」場合のことが全く想定されていません。
それは、代が途切れることがあってはならないことであり、墓を作るときからそこにから言及してしまうことが「タブー」とされてきたことに他なりません。
タブーであったにもかかわらず、昔から「無縁墓」の増加は大きな問題となっていました。
もうそろそろ、「私たちの間に”永遠の墓”なんてなかったんだよね!?」と涙ながらにみんなで語り合うべき時がきているんじゃないでしょうか。
(そういう意味では、永代供養の「永代」も私はあまり好きではありません。)
お墓は「永代」が前提ではなくお墓を守る人がいるまで、いなくなったらお墓は撤去するけどご遺骨は合葬墓できちんと供養しますよ、というシステムは、お墓を買う人にとって安心なだけではなく、非常に合理的ですよね。
加えて、寺院・霊園にとってもどうすることもできない無縁墓の処遇に悩むことが減るわけで、それは結果として荒れた墓地が減るためお墓の利用者にも大きなメリットです。
これからは、「永代供養付き墓地」がむしろ主流、いや普通になっていくのではないでしょうか!?
たった10年の間ですが、お墓を持つ人、お寺さん、民間の墓地運営者など多くの方とお話しするにつけ、世の中のお墓事情は日に日にどんどん変わっていることを実感します。
誰もが同じような場所に同じような墓を建て、同じように子孫に引き継いでいく、そんな時代はもう終わりました。
「最近は先祖を敬う気持ちが薄れているのでは?先祖をもっと大切に。」というお寺や墓地の関係者の話も耳にします。
しかし、何より大切にしなければならないのは、今生きている人の人生です。
年を取った人が安心して余生を送ることができ、遺される人も安心して見送ることができる、お墓を通じて、そんな皆様の人生のお手伝いができればと思っております。