インターネットで葬祭プラン「小さなお葬式」を販売するユニクエスト・オンライン(大阪市、田中智也社長)が提供する永代供養サービスが、日本経済新聞にて取り上げられた。
遺族による供養や管理が不要で、霊園や寺院に永年にわたり遺骨を管理し、供養してもらえるのがいわゆる「永代供養墓」。この永代供養墓を1体55,000円という破格の費用で提供しているのが売りだ。
しかも、55,000円という価格ながら、遺骨は当初2年間は合祀されず個別に安置し、期間内に遺族が希望すれば返却を受けることもできるという。納骨先は、首都圏・関西圏・名古屋圏の三大都市圏を中心に全国約60の寺院から選択することができる。
イオンも参入し価格競争は一挙に激化
実は、ユニクエストのような、複数の寺社と提携した永代供養サービスには、既にイオンが「イオンの永代供養」というブランドで参入している。
その価格は、何と35,000円からと破格。遺骨ではなく生前の申し込みならさらに安く30,000円からというから驚きである。
イオンの永代供養では、関東を中心に全国17の寺院から納骨先を選ぶことができる。
また、株式会社みんれびも、「小さな永代供養」というブランド名で、こちらもイオンと同じ35,000円という破格の料金で永代供養サービスを展開している。「小さな永代供養」では、別料金のオプションで、戒名をつけたり位牌を残したりすることもできる。
一般的な永代供養では、日経の記事によれば30万~50万円程度、とあるが、これはおそらく東京でも特に都心部の永代供養墓の相場ではなかろうかと思われる。東京でも郊外であれば15~20万円程度で提供されている霊園も存在するうえ、都立霊園でも「合葬埋蔵施設」と呼ばれるいわゆる永代供養墓に近いものを5万円程度から利用することができる。(都立霊園の合葬埋蔵施設は、「管理」はしてもらえるが「供養」はしてもらえない。)
とはいえ、やはり前述の3社が既存の永代供養サービスに比べて安い料金体系であることは間違いない。
果たして利益が出るのか!?
永代供養では、共同のお墓に合葬して、寺院が合葬された人を一度に供養するというスタイルだ。
埋葬する遺骨が増えても新たに墓碑が必要になるわけではないし、供養の手間もさほど増えるわけではない。
イオン、ユニクエスト、みんれびは、最初の申込時の手続と取り次ぎを行ってしまえば、その後はほとんど手間が発生することもないだろう。
寺院側も、一度永代供養用の設備(合祀墓など)を建ててしまえば、あとは遺骨を受け入れれば受け入れるほど利益率が高くなっていく。
それにしても、果たしてこの価格で十分な利益が出るのだろうか。
一つには、「永代供養」と言っても「永遠に」供養するわけではないことも重要だ。寺院の宗派や霊園の取り決めなどによるが、「永代供養」は、10年、20年、33回忌など、あらかじめ決まった時期までしか供養を行わない、という場合が多い。
また、その期間内に行う供養にしても、どの程度の供養をどのような頻度で行ってくれるのか、個別に行ってくれるのか行わないのか、などは、寺院によってまちまちであり、一般的、包括的な定義というのもまだまだ曖昧である。
業者が上述のような薄利多売モデルを押してきている以上、供養の手間なども可能な限り必要最低限にしているであろうことは推測に難くない。
もちろん、必要最低限が悪いという気は毛頭ないし、これらのサービスは「必要最低限の供養でよい」という利用者の声で登場したこともまた事実である。
従って、個々の利用者が、利用しようとしている永代供養サービスの内容をしっかり把握し、納得したうえで利用する、ということが重要になってくる。
また、寺院側に対しても、大手業者の過度な価格競争に巻き込まれ、目先の利益に利益に追われて供養がおろそかになったりしないことを、切に願いたい。
いずれにせよ、どういった供養が普通なのか、もしくは果たして必要なのか、そのうえでその相場が一体いくらがなのかがよくわからなかった、お墓・供養のサービスに明確な価格を提示していくこれらの流れは、利用者にとても良いものであることは間違いないだろう。