墓じまいと手元供養 -遺骨の一部を手元に

墓じまいする人の多くが、遺骨の改葬先に合葬墓や永代供養墓、または散骨することを選択します。

遺骨を散骨してしまうと、遺骨はもう手元に戻りません。また、どこに向かって手を合わせていいのか分からなくなってしまったという声もあります。
また、遺骨を合葬墓や永代供養墓で合祀してしまった場合も、もうお骨を取り出すことはできません。

墓じまいすることはとても良いことだと思いますが、半面ネガティブな気持ちを持ってしまうという声も聞きます。

  1. 先祖や肉親が建てたお墓を撤去するのが心苦しい
  2. 散骨したが、命日などどこに向かって手を合わせて良いか迷う
  3. 遺骨を合葬墓に改葬したが、個別のお墓にしておけばよかった
  4. 故人が遠くに行ってしまったような気がして寂しいことがある

こうしたネガティブな気持ちを和らげたい、こんな後悔をしたくないという方におすすめなのが、一部の骨を「手元供養」で手元に残しておく、という方法です。

手元供養とは

手元供養とは、故人の遺骨をお墓や納骨堂ではなく、自宅などで保管することを言います。
最近は、遺骨を納められるペンダントや指輪があったり、遺骨そのものをダイヤモンドに加工してアクセサリーにすることもでき、それも含めて「手元供養」と呼んでいます。

少し前までは、「遺骨はお墓に納骨しないと故人が成仏できない」、などと言われたり、また言葉は悪いですが「遺骨」というものに対する嫌悪感もあり、四十九日や一周忌を超えて遺骨を手元に置いておく人は稀でした。

しかし、現在のように高温で火葬を行えば遺骨は白くて無臭のカルシウムの塊となってしまいますし、「死」を「穢れ(けがれ)」としていた日本古来の宗教的意識の変化もあって、遺骨を手元に置いておく抵抗感は薄れているように思います。

また、遺骨を加工してダイヤモンドを生成しアクセサリーにする、という方法も最近メジャーになってきました。
ダイヤモンドになってしまえば、「骨」ということは全く意識せずに身に着けることが可能です。

手元供養関連グッズの進化

かつては、遺骨を自宅に置くとなると、骨壺を骨箱に納めてどこかに置く、くらいのものでしたが、最近では色々とバリエーションも増えてきました。

小型仏壇タイプ

小さな骨壺に遺骨を納める小型仏壇タイプの手元供養グッズです。
花立、線香立て、ロウソク立てなど仏壇に必要なもの、日々の供養にも充分なものがコンパクトにそろっています。
骨壺も一見骨壺とはわからないようなデザインになっていたります。

洋間に合うデザインのものなど多種多様なものが販売されていますが、安いものだと2~3万円程度と、かなりお手軽です。

アクセサリー

墓じまいをして一部の遺骨を手元供養に、という場合には、アクセサリーにするのもおすすめです。
アクセサリーの場合、

  • 遺骨を粉骨したものを納めておけるペンダント・ブローチタイプ
  • 遺骨そのものをダイヤモンドに加工して指輪やネックレスにするタイプ

の2タイプがあります。
遺骨を粉骨にして納めるタイプは、数千円くらいから購入でき、お手軽です。
ペンダントの形も、多くのメーカーから色々なものが出ていますので、お好みに合わせて選ぶことができるでしょう。

ペンダントタイプが充実している[手元供養本舗]

一方、遺骨をダイヤモンドに加工する場合は、加工賃とダイヤを載せる指輪等の値段がかかり、費用は30万円くらいから、平均で50~100万円と、少々値が張ります。
また、遺骨からダイヤモンドを生成できる機械は世界にも少なく、注文から納品までは2~3か月くらいと時間もかかります。
ただ、出来上がったものは正真正銘のダイヤモンド。傷つきにくく朽ちることもないうえ、きれいな輝きをもったこの世に唯一の宝石を作ることができます。

ハートインダイヤモンドHPより

ちなみに、普通に遺骨をダイヤモンドに加工すると、骨に含まれる窒素の影響でオレンジ色ないし琥珀色に近い色になります。
遺骨から透明など他の色のダイヤモンドに加工する場合は、精製工程が加わるため、やや値段が上がります。

アクセサリーとして使いやすいものを求める人は透明なダイヤ、遺骨をなるべくそのまま使ってほしいという人はオレンジ色のダイヤを選ぶことが多いそうです。

仏壇型納骨家具

仏壇型で、かつ通常の大きさ(7寸くらいまで)の骨壺を収納しておける家具です。

仏壇としての機能を備えつつ、デザインは今風の洋間にも合うようなものが増えています。
骨壺を納めるように作られているため、墓じまいをしてお骨を少し手元に、という場合にはちょっと大きすぎるかもしれません。
価格は30万円くらいからと、家具としては高価な部類になります。
仏壇も必要、という場合であればこの選択肢もありでしょう。

手元供養を終えるときはどうする?

さて、手元供養ですが、その必要が亡くなった場合、遺骨を廃棄することはできません。
(遺骨の廃棄は犯罪になりますので、絶対行わないようにしましょう。)
遺骨は、お墓に納骨する、散骨するなどする必要があります。

遺骨をダイヤモンドに加工した場合は、遺骨ではなくなりますので、処分等は普通のダイヤモンドと同様に行えます。

いずれにせよ、手元供養の場合は、最終的に手元の遺骨をどうするか、という問題が残ることには注意しましょう。

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田辺 直輝(たなべ なおき)
 一墓一会編集長
 お墓アナリスト
 海洋散骨アドバイザー
 私がお墓関係の仕事に関わり始めたのは10年ほど前。
 たった10年の間ですが、お墓を持つ人、お寺さん、民間の墓地運営者など多くの方とお話しするにつけ、世の中のお墓事情は日に日にどんどん変わっていることを実感します。
 誰もが同じような場所に同じような墓を建て、同じように子孫に引き継いでいく、そんな時代はもう終わりました。
 「最近は先祖を敬う気持ちが薄れているのでは?先祖をもっと大切に。」というお寺や墓地の関係者の話も耳にします。
 しかし、何より大切にしなければならないのは、今生きている人の人生です。
年を取った人が安心して余生を送ることができ、遺される人も安心して見送ることができる、お墓を通じて、そんな皆様の人生のお手伝いができればと思っております。