近年「墓じまい」を行う人は年々増えており、一つのブームになっている感さえあります。
30年ほど前では、お墓をなくしてしまう、というのはあまり考えられないことでした。養子を取ってでも家名とお墓を誰かに受け継がせる、というのが一般的でした。
むしろお墓に関しては、バブルの煽りを受けて「数が足りない!今買わないと買えなくなる」というのが世間の共通認識のようになり、不動産と同じく高騰する有様。
しかし、少子化社会を迎え、またおひとり様の増加もあり、お墓を子々孫々引き継ぐということは現実的に無理が出てきました。
いや、前から無理があるのに皆薄々気付いていたものの、いよいよ無視できなくなってきた、という方が正しいかもしれません。
2018年の国の統計によれば、30代の人口1,537万人に対し、60代は1,844万人と、約1.2倍。
単純計算ですが、1人あたり1.2人分のお墓を、つまり夫婦2人だと2.4人分ものお墓の面倒を引き継ぐことになります。
墓じまいする人の変化
そういう現実が明らかになった今、「墓じまい」は、
「受け継いでくれる人がいないから墓をなくす」
ものから
「受け継いでくれる人がいなくなるのを見越して墓をなくす」
というものに変わりつつあるように思います。
事実、「跡継ぎがいなくても安心」という売りだったはずの永代供養墓ですが、最近は子供がいて離婚や死別もしていない「跡継ぎがいる」ご夫婦の申し込みなども増えています。
彼らは皆、「子供に面倒、苦労をかけたくない」と口にします。
今の60~70代の人は、世代的に「他人に迷惑を掛けたくない」という意識が非常に強い気がします。
また、世代的に子供世代よりお金がある人も多く、なおさら「子供には面倒をかけたくない」という気持ちを強くしているようです。
楽ではない年金生活と墓じまい
一方で、高齢者の激増により、高齢者の医療費負担が増えるなど、年金生活も楽ではありません。
現在、日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳(2016年)と過去最高を記録しています。
この平均寿命、実は少々ややこしくて、これは今産まれた0歳児があと何年生きるか、という0歳児の平均余命のことなのです。
従って、今60歳の人があと男性で0.98年、女性で27.14年生きる、ということではありません。
60歳の人があと何年生きるか、というのは別の「年齢別平均余命」というデータがあります。
それが下の表です。

データが平成22年(2010年)とやや古いのですが、これにより、各世代が平均何歳まで生きるか、というのが分かります。
0歳:男性79.64歳、女性86.39歳(←つまり平均寿命)
60歳:男性82.84歳、女性88.37歳
70歳:男性85.08歳、女性89.53歳
80歳:男性88.57歳、女性91.59歳
70歳で言えば、男性であと15年、女性であと20年は平均で生きることを示しています。
(平均寿命 - 実年齢)よりも長くなるわけです。
ちなみに、要介護者の発生率は、80~84歳では29.9%、85歳以上ではなんと60.3%にも上るというデータもあります。
将来的な医療費・生活費を考えると、少しでも出費は減らしたいというのは多くの高齢者が考えるところでしょう。
このような状況で圧縮できる経費は何か、となると、上位に挙げられてしまうのが「お墓」などの葬祭関連費なのです。
お墓の維持費(管理費、檀家料、護持会費など)は、公営墓地の場合は数千円程度と比較的安いですが、寺院墓地だと年間4~5万円+αというのが相場でしょうか。
維持費に加え、
・お墓そのもの(墓石など)の維持費
・体力の低下や認知症によりお墓参りできなくなるリスク
・お寺との付き合いをどうするか
といったリスク・デメリットを考えると、高齢者には負担が大きいのは事実です。
お墓の撤去に抵抗感があるかないか
そもそも「お墓をなくす」という行為は、先祖を祀り敬うことが自分や子孫の繁栄につながるという昔の考えを持つ世代の人々にとってはあり得ないことでした。
今や、お墓はあくまで先祖を祀るための「ツール」に過ぎないことが、戦後生まれ世代くらいからの共通認識となりつつあるように思います。
ですから、墓じまいを行う人の多くは「お墓の撤去」に抵抗がありません。
お墓を撤去する際は、お坊さんを呼んで墓石の「お性根抜き」をするのが一般的とされてきましたが、今やそれを執り行う人はかなり少数です。
「お墓の撤去に抵抗がない」というのは、墓じまいにお金を掛けることに意義を感じない、つまり墓じまいにお金を掛けたくない、ということとニアリーイコールでもあるのです。
しかし、世の中には、世話を放棄された「無縁墓」が無数にあります。
熊本県では公営墓地の3割が無縁墓だったという話もあるほどです。
墓を残そうとして結果的に無縁墓としてしまった人と、お墓をなくして永代供養墓等で先祖の霊を供養した人と、結果的にどちらが先祖を大切にしているでしょうか。
私は後者ではないかと思います。
「お墓」というものが、今生きている人にとって何なのか、慣例や風習にとらわれず考え直す時代が来ているのではないでしょうか。

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たった10年の間ですが、お墓を持つ人、お寺さん、民間の墓地運営者など多くの方とお話しするにつけ、世の中のお墓事情は日に日にどんどん変わっていることを実感します。
誰もが同じような場所に同じような墓を建て、同じように子孫に引き継いでいく、そんな時代はもう終わりました。
「最近は先祖を敬う気持ちが薄れているのでは?先祖をもっと大切に。」というお寺や墓地の関係者の話も耳にします。
しかし、何より大切にしなければならないのは、今生きている人の人生です。
年を取った人が安心して余生を送ることができ、遺される人も安心して見送ることができる、お墓を通じて、そんな皆様の人生のお手伝いができればと思っております。


