東京都港区元麻布、六本木ヒルズや麻布十番商店街からもほど近い場所だが、そこには都会の喧騒とは縁遠い静かな高級住宅街が広がる。
このあたりは江戸を見下ろせる山が多い地形であるため、江戸時代からの寺院が多く残っている。伝燈院麻布浄苑もその元麻布の一角にある。
麻布浄苑は、平成8年に開園した納骨堂で、今年で開園20年を迎える。運営する伝燈院は元々石川県金沢市で400年近い歴史を誇る古刹で、麻布浄苑は別院としてセレモニーホールなどと共に納骨堂が設けられたものだ。
永代供養付きの納骨堂
麻布浄苑は、50年間の納骨堂の利用およびその後の永代供養がセットになったお墓。
最初の申込時に費用(前払管理費を含む)を払えば、50年間は個別の納骨庫を利用でき、その後は麻布浄苑内の合祀施設に改葬される。最近増えている永代供養墓の一つだ。
自分の子や孫に費用負担をかけずにすむ、子や孫など承継者がいない場合でも買うことができる、まさに現代需要が増えているお墓である。
また麻布浄苑はほとんどが屋内施設であるうえ、伝燈院によって管理されているためなかなかお墓参りができない場合でもお墓が荒れるなどといった心配とは無縁であり、日々供養もされるという安心感もある。

近い・早い・きれい
先ほど、なかなかお墓参りができない場合でも心配ない、と書いたが、実はむしろ気軽にお墓参りができることこそがこの麻布浄苑を選ぶ一番のメリットかもしれない。
「都心にある」「施設がコンパクト」「手ぶらで来れる」という三点セットが揃ってあり、いつでも気軽にお参りに来れるのだ。
「会社帰りに寄られる方も多いですが、お昼休みにいらっしゃる方もいますね」(麻布浄苑 山口さん)というから驚きだ。
気になるそのメリット三点だが、まず最初に、「都心にある」こと。最寄の地下鉄麻布十番駅、広尾駅からは徒歩で約10分前後、六本木からならタクシーで数分、渋谷、新橋あたりでもタクシーで15~20分程度と便利な場所にある。都心勤務であれば仕事中や仕事帰りに気軽に立ち寄ることができる。また、家族が地方に住んでいてバラバラな場合でも集まりやすい、というメリットもある。

二つ目は「施設がコンパクト」。小さいと言ってしまえばそれまでなのだが、お墓という施設が非常に機能的かつコンパクトにまとめられているのには様式美すら感じる。
まず中央には緑の屋根の観音堂。ここは観音様が祀られているのに加え、壁面には大きさ10センチほどの小観音像がたくさん祀られている。実はこの小観音像、納骨堂に眠る人のお骨が少し入れられるようになっており、それをここに祀ることで、普段は観音堂でお参りができるようになっているのだ(骨壺は後述の納骨堂に治められている。)。伝燈院によって日々の読経が行われている。
この観音堂を取り囲むように石造りの屋外納骨堂がある。壁面型のお墓に近い形だが、それぞれのお墓は石の扉がついたロッカーのような形になっている。
そして、観音堂の地下には、屋内納骨堂が設けられている。漆塗りの扉がついた納骨庫が並び赤い絨毯が敷かれたその様は、知らずに入ればお墓だとは気づかないかもしれない。このロッカー型の納骨庫は、扉を開けてお骨の前でお線香をあげてお参りすることもできるようになっている。

また、それぞれの施設は驚くほど管理が行き届いており、實に清潔に保たれている。
通常の霊園では、入口に着いてからもお墓までが遠かったり、段差があったり、などということもあるのだが、麻布浄苑はとにかくすべてが近い。移動に悩まされることもないだろう。

最後は「手ぶらで来れる」。お線香など最低限必要な道具が施設に用意されているため、自分で持って行く必要がない。荷物にならないのはもちろん、予定外に立ち寄りたいときであっても、不便なくお墓参りができてしまうのである。
月並みな言い方にはなってしまうが、まさに「近い・早い・きれい」なお墓なのである。
お墓っぽくはない?・・・
さて、いいこと尽くめの麻布浄苑だが、もちろんだからこその難点もある。
それは「お墓っぽくない」ことだ。
納骨堂も立派ではあるのだが、縦横数十センチの納骨庫の前でお祈りするというのは我々のイメージする「お墓参り」とは少なからず異なり、どちらかというと仏壇でお参りしている感覚に近い。それならば家の仏壇でも良いのではないか、という人もいるだろう。
もう一つは、いわゆる「お墓参り」のプロセスを踏めないというところだ。お花とお線香とろうそく、そして掃除道具を持って行き、お水を汲んで、お墓をの草を抜き墓石を丹念に洗って掃除し、すっかりきれいになったお墓の前でお参りする、そういうお墓参りの「達成感」的なものは薄いだろう。
これらの点は、先ほど述べた「気軽にお参りできる」メリットと表裏一体であり、利用者の好みが分かれるところだろう。
もっとも、従来の「お墓参り」というのはそれなりに時間と体力を要するものでもあり、高齢化社会においては重要度が下がってくるところかも知れない。
気になる費用は100万円から
気になる費用だが、屋内納骨堂1人用(50年間利用プラスその後の合葬)で、100万円(前払管理費10万円を含む)となっている。
屋内納骨堂2人用の場合は162.5万円、4人用であれば280万円となる。屋外納骨堂を希望する場合はこれらより若干高い。
また、小観音像を観音堂に安置する場合はオプションとなり、1体あたり20万円の追加費用が必要となる。
費用総額としては、従来型の墓石のお墓よりは安いと言えるだろうが、永代供養墓としては高めの設定だ。しかし、都心一等地にあることを考えればこれくらいになってしまうのだろうか。
費用の支払いは、申込時に一括となる。従って、購入後に費用が発生することもなく、承継者に負担をかけることもない。
洗練された新しい都会のお墓の形
麻布浄苑は、先ほども述べたとおり、非常に清潔であり、かつ高級感もある。
もともと納骨堂というものはお墓に入る前に一時的にお骨を納めておくものとしてできたものだそうだ。しかし、麻布浄苑は新しいお墓の一つの形として、納骨堂を昇華させたものとも言えるかもしれない。
毎月第一土曜日の15時からは、観音堂に隣接する坐禅堂で坐禅会が行われているとのこと。これに参加して、住職や納骨堂の利用者の方々と交流を図られるのも良いだろう。
麻布浄苑は、東京メトロ南北線・都営大江戸線麻布十番駅より徒歩約10分、日比谷線広尾駅より徒歩約12分。見学希望にも快く対応していただける。
伝燈院 麻布浄苑(公式サイト)